外国人の在留手続き手数料、欧米並みに値上げへ

外国人が日本に滞在し続けるために必要な在留手続きにかかる手数料が、近く欧米諸国並みの水準に引き上げられる見通しとなりました。これは、行政サービスの質の向上や、増加する外国人への対応コストを賄うことを目的としています。この大きな変更が、在留外国人や受け入れ企業にどのような影響を与えるかを見ていきましょう。

1. 在留手続きにかかる手数料とは

在留手続きの手数料とは、外国人が日本での滞在資格(在留資格)を新たに取得したり、すでに持っている資格を更新・変更したりする際に、出入国在留管理庁に支払う行政サービス利用料のことです。
これらの手数料は、申請を受け付け、審査を行い、新しい在留カードを発行するなど、一連の行政事務にかかる経費の一部を賄うために徴収されています。現在、日本の手数料水準は、他国と比較して比較的安価に設定されています。

2. 手数料検討の背景

政府が在留手続きの手数料値上げを検討し始めた背景には、大きく分けて以下の3点があります。

(1) 国際水準との大きな乖離
現行の日本の手数料は、イギリスやドイツ、アメリカなどの欧米主要国と比較して極めて安価です。例えば、これらの国々では在留許可の更新や変更に数万円から十数万円の手数料を設定している例が多く、日本の4,000円という水準は、公費負担の割合が大きいと指摘されてきました。受益者負担の原則に基づき、国際水準に近づける狙いがあります。

(2) 外国人増加に伴う行政コストの増大
近年、日本で働く外国人や留学生が増加し、出入国在留管理庁における審査件数や事務量が大幅に増えています。これに伴い、審査体制の強化、オンライン申請システムの導入などのデジタル化投資、多言語対応を含む窓口サービスの拡充といった行政コストが増大しています。

(3) サービスの質の向上と環境整備
集められた手数料を、単に経費の補填に充てるだけでなく、より迅速かつ正確な審査体制の確立や、在留外国人が安心して暮らせるような生活環境の整備などに再投資することが期待されています。特に、行政手続きのIT化を進め、利便性を高めるための財源確保が急務となっています。

3. 政府の検討案

政府が現在検討しているのは、この在留手続きの手数料を、イギリスやドイツといった欧米主要国と同等の水準まで大幅に引き上げるというものです。値上げ幅や具体的な実施時期については調整中ですが、段階的ではなく一気に値上げする案も有力視されており、在留外国人の経済的な負担増は避けられない見通しです。2025年11月27日の発表では、永住許可の手数料(現行1万円)を「上限30万円」に引き上げる案が示されています。加えて、日本国籍を取得する「帰化」の要件も厳しくする方向で、法改正も視野に議論を進められています。

4. さいごに

在留手続き手数料の値上げは、日本が外国人を受け入れる体制を強化し、より質の高い行政サービスを提供するための必然的な一歩と位置づけられています。しかし、在留外国人にとっては家計への影響も大きいため、政府には値上げによるサービスの具体的内容や、徴収した費用がどのように使われるのかについて、透明性をもって説明することが求められます。
この政策変更は、日本の国際的な人材獲得競争力にも影響を与える可能性があるため、今後の議論に注目が集まります。

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